第70話 「ほんとうを見つける時間」
占星術タンバリン物語
第70話「ほんとうを見つける時間」
みんな各々に、
食べたいものを選んだ。
私は、
薔薇デニッシュを手に取り、
まじまじと見た。
体の中で、滝が流れるような音がした。
ー あ り が と う ー
と声がした。
声は、
自分の深い中心部から
やってきた。
次に、匂いを嗅いだ。
どこまでも自由だった
小学生の時の自分を
思い出した。
家族の笑顔もいっしょに。
ー いつも いっしょ ー
と聞こえてきた。
口に入れて噛んだ。
その瞬間、涙が流れた。
忘れてた大事なもの。
ー 愛し たい ー
と。
味わってるうちに、
ー 愛し 合いたい ー
と出て来た。
飲み込んだ瞬間に、
カラッとした風が
バラの匂いとともに
食卓に流れきて
私の涙の跡を
消し去っていった。
カランコロン
つづく